■問題意識「公共的霊性と地球的平和」

 小林正弥です。いよいよ11月27日のシンポジウムが近づいてきました。
 このシンポジウムは「スピリチュアリティと平和」というテーマで、おそらくこれまで類例のないものではないか、と自負しています。平和のシンポやスピリチュアリティのシンポはそれぞれ様々に行われていますが、この双方を本格的に論じたシンポがあったかどうか。

 しかし、平和運動が新しく人々を惹きつけて再生していくためには、このような観点が必要ですし、逆にスピリチュアリティに関心を持つ人々が本当に利他的な貢献を社会に行っていくためにはこのような問題意識が必要ではないか、と思うのです。実際、これまでの広報によって、「これこそ、本当に私が求めていたテーマだ」という人が現れてきています。このシンポを皮切りに、平和に向かって行動する人々、いわば「平和への使者」や「平和への志士」が続々と現れてくることを私は望んでいます。

 このシンポジウムに向けて、私達は8月以来、3回の研究会を重ねてきました。
 8月に「公共的霊性と地球的平和ーー新しい平和運動の構築に向けて」という報告を私が行い、シンポの基本的問題意識を説明しました。

まず、過去の平和運動の問題点を思想的に乗り越える必要性を指摘して、その1つの試みとして、私が主宰しているフィロソフィア第1回の内容を簡単に紹介しました。そして、スピリチュアリティの概念について、鈴木大拙から始まって近年の主要な考え方を紹介し、暫定的な定義を提起しました。「超越的・形而上的実在に基づく(その存在を含意する)世界の特性ないし人間の精神性・宗教性」というものです。

 そして、平和運動を再生させるためには、内面的平和と外面的平和との間で好循環を形成する必要があることを主張しました。シンポの副題「こころと世界をつなぐムーブメント」は、スタッフの間で相談して、これをわかりやすく表現したものです。

 さらに、「公共的霊性」という概念を提起しました。これは、「市民宗教」という概念を発展させたもので、公共哲学における「公(国家、政府)/公共(人々、民)」という区別を念頭に、霊性の概念と結びつけたものです。平和をはじめ政治的問題についても精神的・霊的観点が必要だからです。「公的霊性」が国家宗教を意味してしまうのに対し、「公共的霊性」は、人々の間で下から形成される霊性です。また、特定宗教を意味しないために、「宗教」ではなく「霊性」という言葉を用いました。

 国民国家を超えた「地球的平和」を実現するためには、靖国問題に見られるような「公的霊性」を避けて、「公共的霊性」に目を向ける必要があるのではないか。これが、シンポジウム第1部「公共的霊性と地球的平和」の問題意識です。

 でも、世の中には、「スピリチュアリティ(霊性)」という概念を聞くだけで、「怪しい」と危険視したり忌避する人もまだ数多く存在します。そして、そこには、それだけの問題点も事実存在します。そこで、スピリチュアリティのもたらすポジティブな側面に注目する一方で、そこに伏在する注意点についても予め自覚することが必要でしょう。

 具体的には、
●利己主義的呪術(原始時代から)
●国家宗教(古代からの公的霊性、国家神道、現在では靖国問題など)
●原理主義宗教(世界宗教にも見られるキリスト教・イスラーム原理主義など、
    「反テロ」世界戦争の思想的一因)
●カルト宗教(最近の全体主義的霊性、統一協会・オウム真理教事件など)
を挙げておきたいと思います。靖国問題などについては、次項でふれたいと思います。

 以上が、このシンポにおける私自身の基本的問題意識です。この研究会には、稲垣先生が来てくださり、靖国問題などについてコメントをしてくださいました。そこで、先月の研究会「神道と靖国問題」についても、稲垣先生に報告して頂くことが決まったわけです。

■事前研究会を踏まえて

 続いて、9月・10月と2回の平和公共哲学研究会を行いました。平和に向けてスピリチュアリティの重要性を語ると、現在与党に加わっている公明党の姿勢や、靖国問題がしばしば論点として指摘されます。そこで、この二つについて、学問的な観点を踏まえて議論する場を作りました。

 9月の研究会は、「スピリチュアリティと平和2-日蓮仏教の公共的展開」と題し、日蓮仏教に関する、戦前から現在に至る展開について、大谷栄一先生(南山宗教文化研究所)に「戦前期日本の日蓮仏教にみる戦争観」 という報告をして頂きました。市民からの報告や議論も行い、大いに盛り上がりました。創価学会も含めて考えると、日本における日蓮仏教の信者の数は極めて多いので、日蓮仏教について正面から議論することが重要だと思います。ここでは、日蓮仏教を公共的に展開するにあたって、様々な問題や課題が指摘されると共に、その意義やその経験から学ぶべき洞察も論じられました。

 10月の研究会は「スピリチュアリティと平和3-神道と靖国問題」というテーマで、鎌田東二先生(京都造形芸術大学)から「『日本的霊性』を問い直す」、また稲垣久和先生(東京基督教大学)から「宗教感情から霊性へ」というご報告を頂き、活発な議論を行いました。鎌田先生は鈴木大拙の「日本的霊性」の観念を批判しながら、神道におけるスピリチュアリティについて話されました。
 また、稲垣先生は、公共的霊性の観念を用いつつ、靖国問題について議論を提起されました。靖国神社は創立以来、「国家神道」との結びつきが深く、いわば「公的霊性」に相当することになります。これに対して、「公共的霊性」という観点から、単に靖国参拝を批判するだけではなく、それに代わる代替的国立施設を建設することがその解決策として提案されました。
 平和問題にとっては非常に重要な靖国問題について、神道のスピリチュアリティの観点からの議論と共に論じる機会はほとんどないので、この点でも貴重な研究会だったと思います。

 この双方の研究会は、平和公共哲学研究会としては、参加者数が最大規模のものとなり、関心の高さが感じられました。また、研究者も相当数参加しておられ、研究者と市民の双方が関わるこの研究会の性格が明確に現れていました。

 さて、これらの成果を踏まえて、いよいよ27日のシンポを迎えることになります。私の8月の報告やこれらの研究会を通じて、スピリチュアリティに関連する問題点や課題についてはかなり深く議論をしたと思います。そこで、シンポでは、これらの点を念頭に置きつつ、むしろスピリチュアリティが平和の実現に対して持つ積極的な意義や可能性に焦点を当てたいと思います。

■当日の構成と目的

 それでは、いよいよ当日の構成を説明します。チラシなどの説明をさらに詳しく述べてみます。
 特にオウム真理教事件以来、「スピリチュアリティ」という概念には、それだけで「怪しい」「危険だ」というイメージが多くの日本人に持たれるようになってしまっています。そこで、今回のシンポでは、このような状況を払拭して平和に対するその積極的意義を引き出すために、次のような3部構成を考えました。

●まず、第1部では、研究者が、相対的には客観的・理性的にこの問題を論じて、以上のような懸念を払拭し、スピリチュアリティの平和への意義を論じる。
●ついで、第2部で、実践者から、具体的に生き生きと、このテーマに対して語って頂く。
●最後に、第3部で、参加する市民から、この主題に寄せる思いや感想・要望などを積極的に語って頂く。

 まず、第1部「公共的霊性と地球的平和」では、研究者の観点から問題提起がなされます。稲垣先生はキリスト教の立場から、吉田先生は仏教の立場から、斉藤先生は新宗教の立場から話されますし、島薗先生は日本を代表する宗教学者で新霊性運動にも深い知見を持っておられます。特定宗教の立場に限定されて論じると、平和の実現には結び付きにくいので、このように様々な立場からの議論を展開することによって、内面的なスピリチュアリティが外面的な平和へと寄与する道が開かれることを期待しています。

 次に第2部「スピリチュアルな平和の実践」では、スピリチュアルな観点からの実践を行っておられる方々からの議論がなされます。26日の東京平和映画祭では「ホピの予言」が上映されるので、それに合わせて、星川淳、辰巳玲子の両氏にネイティブ・アメリカンの観点からの話をして頂きます。また、日本で同様の観点を持つ地域として、平和問題でも重要な沖縄が考えられますが、沖縄神人[カミンチュウ]巡礼を主催しておられる比嘉良丸氏に祈りや話しをして頂きます(順序は第2部の初め)。さらに、海外の近年のスピリチュアリティの紹介に大きな役割を果たされている山川亜希子氏に登場して語って頂きます。

 それぞれが異なったスタイルを持ちつつも、共通して、スピリチュアルな観点から、平和の実現に向けてのメッセージをいただけると期待しています。内面的平和と外面的平和、「こころと世界をつなぐムーブメント」というテーマは、この第2部でもっとも本格的に展開されるだろうと予想しています。

 第3部は、対話集会です。本ネットワークが企画している最近のシンポジウムでは、対話集会で極めて活発な議論がなされ、1つの特色となっています。特に今回は他に類例の少ない企画なので、これについての生き生きした意見が聞けるだろうと想像しています。皆様も積極的にご発言ください。

 また、この中で、小林一朗、鬼丸昌也、きくちゆみ、石橋行受、ベンジャミン・フルフォード(チラシ作成の後に来て頂くことになりました)の各氏にも短いスピーチをして頂きます。これらの方々は、新しい平和運動の波を代表しておられ、普段は平和運動の中身について話されています。今回は、その背景にあるスピリチュアルな発想について語って頂きたいと思っています。

 さらに、今回のテーマにふさわしく、スピリチュアルな、平和への祈りや瞑想や歌などをごく短時間行うことを予定しています。第2部のはじめに比嘉良丸氏から、また第3部の終わりに山川亜希子氏から行って頂くことを考えています(交渉中)ので、お楽しみに。地球平和公共ネットワークでは、「平和術(アート・オブ・ピース)」を提案していますが、「スピリチュアル・アート・オブ・ピース」をここから発展させていきたいと願っています。

 このシンポに期待されている皆様、それぞれの思いや願いを書かれたらいかがでしょうか。それを参考にして、なるべく周囲の人達に声を多くかけ、200人の会場を埋め尽くしましょう!

4 Comments

  1. スピリチュアリティと平和ネットワーク » Blog Archive » スピリチュアリティと平和~こころと世界をつなぐムーブメント says:

    [...] 『シンポジウムに向けて』  http://global-public-peace.net/symposium-blog/?p=47 ○当日プログラム: ダウンロードできます  051127program3 ○フライヤー: [...]

  2. 「スピリチュアリティと平和」シンポジウム » Blog Archive » スピリチュアリティと平和~こころと世界をつなぐムーブメント says:

    [...] ○小林正弥 『シンポジウムに向けて』  http://global-public-peace.net/symposium-blog/archives/47 [...]

Leave a Reply