趣意書1
平和への希望、友愛の螺旋
1.足元からの平和を
一人ひとりが、足元から平和を感じてみる。
いのちの息吹を感じてみる。
自分と世界を感じてみる。
そして、足元から平和の種子を育ててみる。
わたしたちは、直立歩行を始めた人類の「足」という、一人ひとりの人間の原点に立ち戻り、足元から「平和とは何か」を感じとり、考え、行動していこうと決心しました。
2.平和の問いかけ
21 世紀が始まった矢先の2001年9月11日、全世界の人々に「平和とは何か?」という深く重い問いが突きつけられました。
何の罪もない多くのアメリカ市民の命を奪ったイスラム過激派によるテロ行為は、決して許されるものではありません。しかし、自らの命を犠牲にして行われた行為の中から、彼らが抱えた問題の大きさがはじめて浮き彫りにされたのも、もう一つの事実でした。
テロリストは何を求め、何に抗議して、自らの命を犠牲にしていくのでしょうか? 彼らが訴えている声を静かに聴き取り、それを理解し判断し、自分たちも、現実も、共に変えていくような、“共に生きる知恵”を見出していくことができなければ、わたしたちがめざす未来はいつまでも到来しないのではないでしょうか?
3. いのちの尊厳と対話
こういう状況の中、わたしたちは国家による国益尊重の論理から脱し、地球に住む一人ひとりがいのちの尊厳を保障できる平和な社会の実現を具体的にめざそうと考えます。
この社会・国家を形成しているのもわたしたち一人ひとりであり、問題を作り出しているのもわたしたち一人ひとりです。
足元から学んだ大切なこと、それは「何をするにも他人まかせではなく、自らが二本の足で立つ。“個の自立”から始まる」という厳然たる事実でした。そして、「自分が幸せになるには、他者の幸せがあってこそ成り立つ。知らぬ間に他を収奪しているとしたら、いつの日か、必ずその報いがくる」という真理です。
わたしたち一人ひとりが平和に暮らすためには、まず、わたしたちがこの地球上の一個のいのちであるという、個の存在の意味と尊厳を認め合っていくことが必要ではないでしょうか? そうして初めて、対話を通して個と社会と文化の多様な形を練り直し、創造していくことが可能になるのではないでしょうか?
わたしたちが一人では生きられないという現実に気づき、個であると同時に、他者との輪の中で生き、他者の力によって活かされている現実に気づいた時、初めて感謝と幸せの念が起こってくるはずです。
4.大地に根ざして生きる
裸足で大地を踏みしめてみると、ジワ〜ッと大地の体温が飛び込んできます。裸足になるだけで、人は自然の記憶を呼び覚ますことができるのです。そしてその時、“平和”とは、とてもシンプルなことだと気がつくのです。食べて、仲間や家族と談笑して、安心して眠る。それだけで幸せなのだと。
それが、足の裏が教えてくれたもう一つの大切なことです。
わたしたちは、この平和の感覚と、幸せの感覚を、足元から取り戻していきたいと思うのです。
5.新しい非戦・平和運動の形を求めて
そのために、わたしたちは足元に根ざし、しっかりと大地に立ち、自己の感覚をみがき、想像力と思考力を存分にはたらかせ、一人ひとりのこころと、からだと、他者性の目覚めに立ち会いながら、この社会の中で、すきとおる風の息吹とともに、新世紀にふさわしい非戦・平和運動を持続的に展開させていくことを決意します。
しなやかな感性と知性を統合し、楽しく喜びに満ちあふれた平和運動のあり方を模索し、自然と調和し、基本的人権を擁護し、一人ひとりがいのちの尊厳を保障できる世界を創造していくことをめざします。そして、この運動自体の中に、身体性の開発や喜悦や幸福感情を呼び覚ますような芸術性を開発し、創出していきたいと思います。多様性と創造性を愛でる友愛と寛容の精神をもって、平和憲法第9条を新世紀に甦らせる試みに挑戦していきたいのです。
6.非戦パートナーシップの確立
さらには、1949年に憲法で常備軍を廃止し、永世非武装中立宣言をしたコスタリカに学び、アジア諸国から「非戦国家」としての認知を受け、世界中の平和希求市民とのネットワークを結び、積極的な民間平和外交を実践し、一人ひとりの市民が動き、連動することを通じて、「地球平和公共ネットワーク」を立ち上げていきます。
こうして、地球市民一人ひとりが足元から自覚し、平和である実感が持てるような、ヒューマン・コミュニケーション・パートナーシップを、この水の惑星に共に住まういのちや人々とつながることによって実践していきます。
7. 人間の叡智の夜明けに向かって
負の遺産としての2001年を、人類の叡智の夜明けとして記憶されるよう、未来へ向けて、平和文化と、平和の社会を、新しい時代の幕開けの道として提案していきます。
そのための方法を共に、個性豊かに開発・創造し、一つ一つ実現していきませんか。平和への希望を胸に、過去・現在・未来が深く大きくつながる友愛の螺旋の中に、一人一人の創造性と持てる力を投入し、多くの困難を乗り越え、力を合わせて、この宇宙の中にかけがえのない水の惑星である地球の平和を形づくっていきましょう。
2003年1月1日
「足の裏で憲法第9条を考える会」有志
鎌田東二・西田清志
admin @ 11月 5, 2007