包括的非戦声明の特色と今後の展望

(*以下は、包括的非戦声明の記者会見用資料(2003年9月19日)の中から、声明の特色と展望に関する部分を一部改訂したものです)
1.声明の特色
本声明は、戦後の平和問題談話会が行ったような本格的声明を目指している。その特色は以下の通りである。
(1)内容面:新しい非戦の論理の提示。

・9・11以来、アメリカが行っている戦争を「反テロ」世界戦争として統一的に捉え、
その全体に反対する論理を示した点。——「反テロ」世界戦争に抗する包括的非戦声明
・イラクについては引き続き、特措法反対と自衛隊派遣反対を主張し、パレスチナ
問題など他の中東についても論じた。——参戦反対。
・北朝鮮問題を初めて本格的に扱い、本声明の1焦点をなす。——開戦加担反対。
・特に北朝鮮問題について、「安保による戦争加担拒否」の論理を提示。
これと共に、対米随従外交からの脱却を主張。
・非武装平和主義と、より現実主義的な平和主義との双方からの反対論の提示。
・改憲まで含め軍事化総体への批判と平和主義の再生

(2)形式面:ネット時代に即した新しい声明の形態の創造。

・大きな共通性の中の多様性を明示。留保点の明示
——留保付き呼びかけ人の存在。リンク。掲示板。
・状況に応じて展開する動態的声明。強調点——焦点提示方式。
現在の焦点 イラク派兵・北朝鮮危機への対応7
呼びかけ人は原則としてMLに加入。
・流動的ネットワーク—−個々の活動により参加者が変動(有志)
・対象や主体に応じて表現形式を多様化させる重奏的声明。
学術版(詳細版)・要約版・平易版・アート版・簡易版。
・研究者と市民(公共民)との連携。今回の声明は研究者中心に起草し、
市民がわかりやすく翻訳。その過程で浮かんだ意見を一部学術版にフィード・バック。
・これに伴い、署名形式も複数化。
学術版(詳細版)…研究者・知識人としての公共的責任。
だから、敢えて短縮せず、署名形式も研究者を明示。
平易版…研究者も市民(公共民)の一員。だから、署名形式を統一。

以上をまとめて、「研究者と市民の流動的ネットワークによる、多様性を尊重
しつつ大きな共通性を表現する包括的・動態的・多重奏的声明」
・声明の意義:共同の公共的意思表示の場、その再創造

(3)訴えの対象

・名宛人——広く世界と日本の人々。特にマスコミと政治家。
・マスコミ 右傾化批判。日和見主義批判。御用学者批判。
・政策——イラク自衛隊派遣反対、北朝鮮との対話的交渉重視
例えば、6者協議 拉致問題と核問題を分離して、北朝鮮の体制保証による戦争回避
・戦争批判と地球的平和問題(参戦・開戦加担の可否)を総選挙の争点に。
マニフェスト運動の限界
選挙後に起こった展開については公約できない
——ルソーのイギリス議会批判  選挙の間は奴隷!
小泉内閣の公約:民営化などの構造改革、しかしこれは進まず戦争協力
のみ前進。構造改革に期待して投票したら戦争!
→構造改革については公約の達成が問われるが、9・11後の政策については
今回初めて問われる→だからこそ、これを争点とすべき。(2回目は茶番!)
例えば、イラク特措法が成立してしまったから終わりになるのではなく、
イラク派兵の可否を総選挙で問い、もし野党が勝利したらイラク特措法を
廃止すべき。
——今度は、参戦・開戦加担だけではなく、2005年をめどにした改憲案の可能性
だからこそ、平和問題を総選挙の争点に。
——内外二重恩顧主義からの脱却と自立が日本政治の課題
・政界再編との関連
民主・自由合併 野合から大義の下の合同へ
安保による戦争協力反対論。国連中心主義/有志連合・対米随従
社民・共産との関係  声明における非武装平和主義と、より現実主義的な
平和主義との関係、「立場の相違を超えた連帯」に対応。
いわば戦争批判における(小異を尊重しつつ)大同団結
「戦時下」における戦争批判で一致
安保闘争時のように平和問題・改憲問題が浮上する可能性。
cf.戦前の反ファシズム統一戦線  今日の反「ネオ・ファシズム」

2.包括的声明のアート・スローガン・フォーカス
(1)アート(技術・芸術):大きな共通性の中の多様性(小異を尊重する大同)

・インターネットを用いた留保や感想の提示
・モノトーンではない多元的・マンダラ的な芸術的声明

(2)スローガン:包括的声明

・再び戦死者を出してはならない。
・安保条約で拒める戦争加担
・「愛国」の戦争か、「愛民」の平和か?
・地球的平和問題を総選挙の争点に

(3)フォーカス(焦点):動態的声明

・イラク自衛隊派遣反対・アフガニスタン自衛隊撤収
・北朝鮮危機における戦争回避

3.今後の展開

・賛同者を増やし、動態的展開を図る。
・政治家への送付、アピールを行う。
・平和への結集…知識人・研究者の幅広い連帯の構築を試みる。今回の留保付き
署名を起点にして、平和論の立場を超えた連帯を具体化。メタ声明?
・市民(公共民)との連帯…声明は文章作成だから研究者中心。しかし、他の諸
活動では市民がイニシアチブを持つこともあり、これに研究者が協力する。
…デモ、平和運動におけるart of peace –毎回の「足の裏で憲法第9条を
考える会」における音楽演奏。イラク非戦会議における詩 朗読・9・11の集会
など。
・メタ・ネットワーク:各種のタコツボ化した研究者・市民の壁を突破
・政治の原点:声明—理念・政策→政治的争点化

2003年8月19日

admin @ 11月 25, 2009