誘発地震の危険に対する原発の停止と対策を求める緊急声明

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誘発地震の危険に対する原発の停止と対策を求める緊急声明

東日本大震災によって、福島第1原発ではチェルノブイリに匹敵する原子力災害が発生した。日本は、広島・長崎の被爆に続き、福島で被曝という悲しい体験を負うに至った。作業員・周辺住民・子供たちをはじめ多くの人々の健康が、被曝により深く危惧される。小佐古敏荘東大大学院教授(放射線安全学)の内閣官房参与辞任に象徴されるように、政府の対応は、まだ不十分と言わざるを得ない。

そもそも、地震と津波によるこのような原子力災害は、決して想像できなかったことではなく、様々な形で識者や市民から警告されていたことであった。それ故、この災害は「天災」ではなく、「人災」と言わなければならない。原発推進者たちはM9.0のこの震災を「想定外」として責任を回避しようとしているが、少なくとも今後はこのクラスの震災を「想定内」として、原発を管理しなければならない。

しかも、地震学者たちは、東日本大震災によって日本列島の下のプレートに地殻変動が起こっていると指摘し、近い未来に、M9ー7クラスの房総沖地震、関東南部地震、北海道沖地震や、東海地震、東南海地震、南海地震が起こりうると科学的に予測し警告を発している。

そこで、これらの誘発地震の想定されうる地域において、M9-7クラスの地震に対する対策が充分になされていない原子力発電所は、すぐに停止し、充分に津波・耐震対策などの安全対策を施す前は稼働してはならない。また、定期点検中の福島原発第4号機で使用済み核燃料プールから爆発が生じたように、現在停止中のものも含めて、全国の原発に対して、緊急の防波堤建設や緊急時電源確保、耐震性改善をはじめ、このような危険に対して早急な対策が施されるべきである。

具体的には、福島原発をはじめ東北大震災で危険性が明確になった東北の女川・東通原発(いずれも停止中)の他、特に、世界でもっとも危険と言われる浜岡原発(運転中)、東海第2(停止中)、伊方原発(運転中)などの太平洋岸の原発に対して、即時の稼働中止ないし使用済み燃料棒に対する安全対策が早急に施されるべきである。1次冷却水の放射性物質(放射能)濃度が上昇した敦賀第2原発(運転中)の即時停止はもとより他地域の原発に関しても、地震・津波の危険がある場合はそれに準じた対応が検討されるべきであり、電力需要に応えるための運転再開はなされるべきではない。

特に東海第2原発は、東日本大震災で冷却機能停止の危機に瀕し(外部用電源停止、津波により非常用ディーゼル発電機用海水ポンプも3台の内1台停止)、使用済み核燃料貯蔵プールなどから溢水した。また、六ヶ所再処理工場も、同様の危機に瀕した(外部電源停止、非常用ディーゼル発電機2機の内1台停止、核燃料貯蔵プールからの溢水)。さらに4月7日の震度5の余震で東通原発は、停止中の1号機の使用済み燃料プールでやはり深刻な事態(外部電源停止、核燃料貯蔵プールの冷却停止、非常用ディーゼル発電機3機の内、点検中の2台を除く1台のみ機能したものの、外部電源復旧後に燃料漏れで使用不能となる)に陥った。これらは、福島原発と同様の事態に陥るまで、紙一重の状態であったと言え、東通原発の危機は震度5レベルの余震でも福島原発のような悪夢の事態が起こりうることを例証している。さらに女川原発でも、本震(1号機では外部電源停止、原子炉建屋で20カ所が水漏れ、タービン建屋で火災発生、2号機では原子炉建屋の地下浸水と非常用発電機3台の内2台が起動せず)・4月7日の余震(1~3号機の核燃料貯蔵プールの冷却機能が負荷により一時停止、燃料プールなど8カ所で水漏れ)ともに問題が生じている。

そこで、停止中ではあっても、誘発地震や余震に備えて、このような深刻な問題に対して、充分な対策を早急に施すべきである。現状では浜岡3号機の再開や6号機の新設、高速増殖炉もんじゅの運転再開、六ヶ所再処理工場の運転開始が許されないことは言うまでもなく、各地の新規原発の建設も、批判的市民も交えて時間をかけた公共的熟議をすることなしには決して強行すべきではない。

これは、最新の科学的知見を踏まえた上での十分に蓋然性をもつ論理的要請なので、人間の生命を最優先的に尊重し、電力需要、経済的利益などの問題はこの次にして、すぐに実行することを政府・電力会社に強く要請する。

2011年5月6日 午前10時55分

地球平和公共ネットワーク有志
池田恵子(山口大学)、板垣雄三(東京大学名誉教授)、稲垣久和(東京基督教大学)、上村雄彦(横浜市立大学)、内山田康(筑波大学)、梶原宏之(梶原博物事務所)、鎌田東二(京都大学)、きくちゆみ(つなぐ光発起人)、鬼頭秀一(東京大学)、小林正弥(千葉大学)、重松まみ、島田和子、障子川則子、千葉眞(国際基督教大学)、平野慶次、坊理可、中野弘太郎(公共哲学カフェ世話役、フリーランス編集者)、三瓶愼一(慶應義塾大学)、森中定治、山脇直司(東京大学)、米田晃(人間科学研究所)、渡邉りよ 他

※付記:公表当日の午後7時頃、菅首相は浜岡原発の全原子炉の運転停止を中部電力に要請したと発表した。浜岡原発の停止は本声明における最重要な要請であり、政府のこの要請は英断として高く評価したい。中部電力は受諾の見通しながら、7日の臨時取締役会では結論を持ち越している。誘発地震の危険に対する緊急の対応なので、中部電力には一刻も早く停止することを強く要請したい。(8日午前11時)

admin @ 5月 6, 2011

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