安倍政権による解散・総選挙に関する見解(立憲デモクラシーの会)
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2014年11月26日
安倍政権による解散・総選挙に関する見解
立憲デモクラシーの会
安倍政権が本年7月1日、閣議決定によって憲法9条の政府解釈を変更し、集団的自衛権の行使を可能にする方針を示した際、私たちは、それは憲法の枠内における政治という立憲主義の原則を根底から否定する行為であり、一内閣が独断で事実上の憲法改正を行うに等しく、国民主権と民主政治に対する根本的な挑戦でもあると抗議した。
このたび衆議院を突如解散するにあたり、安倍首相は消費税増税の2017年への先送りと、いわゆるアベノミクスの継続に争点を絞る方針を示した。菅官房長官も、憲法改正は自由民主党の公約であり、限定容認は現行憲法の解釈の範囲内なので、集団的自衛権に関して国民の信を問う必要はないと発言した。衆参いずれの選挙公約にもなかった特定秘密保護法の制定についても「いちいち信を問うべきではない」とした。
しかしながら、戦後日本が憲法を軸に追求してきた安全保障の大原則を転換するとすれば、国民的な議論の上での、手続きに則った条文改正が不可欠である。選挙に勝ちさえすれば、万能の為政者として、立憲主義や議会制民主主義の原則まで左右できるとするのは、「選挙独裁」にほかならない。選挙によって解釈改憲を「既成事実」にすり替え、選挙後の新ガイドライン策定や安全保障法制の整備につなげようとする企ては看過できない。
そもそも内閣による衆議院の解散は、新たにきわめて重要な課題が生じた場合、あるいは国会と内閣の間で深刻な対立が生じ、民意を問うことによってしか膠着状態を打開できない際等に限られるべきものである。このたびの動きは、「政治とカネ」の問題が噴出し、アベノミクスが破たんしつつある中で、支持率低下前にリセットしたいという政権側の思惑による恣意的な解散であり、解散権の濫用とも言える。また最高裁に違憲状態と判断された一人別枠方式に基づく「一票の格差」を抜本的に解決しないまま、再び解散総選挙を行うことは、司法府のみならず国民をも愚弄するものである。
人権を軽視し、権力の恣意的運用に道を開きかねない、立憲主義の原則にもとる憲法改正案を自由民主党が用意していることも懸念される。仮に安倍政権が政権基盤を維持したとしても、選挙で国民に対して憲法改正を正面から提起しない以上、選挙後に条文改正やさらなる解釈変更を進めることは、とうてい許されることではない。この選挙によって政権が、アベノミクス評価を前面に立て、他の重大な争点は隠したまま、白紙委任的な同意を調達しようとしているとすれば、それは有権者に対する背信行為である。
私たちは、今回の選挙が、暴走する権力に対する異議申し立てと、立憲主義的な民主政治再生のための機会と位置付けられるべきであることをここに提起し、有権者の熟慮に期待するものである。
fm @ 12月 2, 2014