個人の意見:衆院総選挙にむけて ——立憲デモクラシーの会・記者会見にて(千葉眞)

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個人の意見:衆院総選挙にむけて
          ——立憲デモクラシーの会・記者会見にて

                            2014.11.26.
                              千葉 眞

(1)11月16日の沖縄県知事選で、翁長雄志さんが勝ちましたね! 10万票の差がつきましたが、これはこれまでの沖縄県知事選との比較では翁長さんの圧勝でした。沖縄の住民は政府からの8000億円のニンジンを拒否し、政府への抵抗を示し、異議申し立てをこのような仕方で明らかにしました。デモクラシーが政府周辺と本土で死滅しようとしているのに対して、沖縄では今なお活性化されています。日本のデモクラシーは沖縄県民の市民的勇気、冷戦な判断、異議申し立てによって何とか持ち応えているようなものかなという感想をもちました。

(2)政府は今回の衆院選は、「アベノミクス」の評価が争点であると主張いたししますが、総選挙はこれまで二年間の安倍政権のパフォーマンス総体に対して、国民が審判をくだすべき選挙であることは間違いありません。有権者一人ひとりの熟慮と投票に期待したいと思います。

(3)解散権の乱用に関しては、すでに声明で明確に訴えています。これは党利党略による自己都合解散にほかなりません。2005年8月の小泉純一郎首相の郵政解散という事例がありますが、今回も同様の自己都合解散であり、大義はありません。
 まっとうな理由もなく、政府が解散権の乱用でしかない衆院選に打って出るのは、現政権の自信のなさを示しており、近いうちにアベノミクスが馬脚を現すことを恐れ、そのために支持率40%台前後の今、選挙をし、次の衆院選を4年後に引き延ばしたいという思惑が見え透いています。今後の政権運営に関する自信のなさが、政府が今回700億円もかかる無駄で道理のない衆院選に再び打って出た主たる理由であると思われてなりません。
 野党の元気のなさは気になりますが、ひるがえって野党の立場から考えてみても、今回の総選挙は「最大のピンチをチャンス」にすべき好機でもあると思います。現在の自民党政権の軍事的抑止力に依存する安全保障政策に舵を取ろうとしている現状を見ていると、下手をするといつかきた戦争の道を進んでいき、将来に禍根を残すことになるのではないかと恐れます。それを憂慮している人々は国内外にワンサとおります。国際世論も軽視すべきではありません。平和憲法のソフトパワーへの信頼力、これはアジアでも世界の他の地域でも絶大なものがあります。これを手放すのは日本にとっても「世界にとっても百害あって一利なし」です。今回の安倍政権の大義なき自己都合解散に世界が注目しています。今回、自民党が大勝ちすると、憲法改定、それによる戦争の道に逆戻りの危険性があります。これはぜひ阻止しなければならないと考えます。

(4)ですので、今回の衆院総選挙は、安倍政権の過去2年間の政治をトータルに問う選挙でなければならず、ここでは有権者個々人の熟慮が問われてくると思います。トータルな評価という観点からいえば、町工場や中小企業や非正規雇用の労働者や社会的弱者に冷酷なネオリベ型経済政策、つまり、アベノミクスの強行、TPP推進、沖縄新基地敷設の強行、特定秘密保護法の制定、集団的自衛権の閣議決定、軍事的抑止力の強化の姿勢および敵視外交による東アジアの緊張と対立、靖国ナショナリズムの強化、原発の再稼働、原発被害地の切り捨てなど。全部が争点だろうと思います。これらの安倍政権の施策はすべて、ほぼ過半数に及ぶ国民世論の無視によって次々と行われてきた。

(5)安倍政権は、この2年間、脱政治化された社会の真空状態につけ込んで、軍事・外交・経済・貿易・教育に渡る広範な施策を独断的に決めて、社会全体をそれに巻き込もうとしているように見えます。安倍政権を突き動かしているモーターがあるとすれば、それは軍事強調路線とネオ・リベラルな金融資本主義という2つの巨大なエンジンを擁する靖国ナショナリズムです。これが定着して戦後ファシズムの初期段階にならないように注視する必要があるだろうと考えております。

(6)最後に安倍政権の体質について一言。これまでの自民党政権のなかでもこれほど、人々の痛みや声や叫びに鈍感で耳を傾けることなく、独断的にいろいろと施策を推進する内閣は過去になかったように思います。原発被災地、沖縄、非正規雇用の労働者と若者、株や投資をやる余裕のない、あるいはそれを拒否する多数の国民には、自分たちは無視され、軽視されているという感情が打ち消しがたく浸透しています。対話なき政治です。その背後には安倍首相個人の、あるいは現政権の一部に共有されている「愚民思想」があるかもしれません。政権内部の「ともだち」だけで自足し自閉している。この点をとくに憂慮しております。
 今回の総選挙はとくに国民一人ひとりが熟慮を重ね、熟議をし、清き一票を投じる必要のある、戦後政治の分岐点となる総選挙ではないかと考えております。その意味で有権者の熟慮と意思表示に期待したいと思います。

fm @ 12月 2, 2014

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